センター長 公認心理師 魚住絹代

◆魚住絹代 Uozumi Kinuyo
熊本県出身。 公認心理師、元法務教官、元大阪府教育委員会訪問指導アドバイザー。福岡教育大学卒業後、福岡、東京、京都の少年院、医療少年院で、法務教官として非行少年・少女の立ち直りを支援。2000年退官後、大阪府の小中学校に支援の場を移す。その活動は、これまで、クローズアップ現代やNHKスペシャルでも取り上げられる。

著書に『子どもの問題 いかに解決するか』(PHP新書)『母親が知らない娘の本音がわかる本』『みんな抱きしめたい』『母親力』(以上、大和出版)、『いまどき中学生白書』(講談社)、『女子少年院』(角川書店)など。

◆当ルームの沿革
日本心理教育センターの原点であるくずは心理教育センターは、大阪と京都の境に位置し、淀川の向こうに、大山崎や天王山を望む樟葉(くずは)の地に、2013年に誕生しました。いつしか手狭になり、二年後、大阪の中心部でありながら、レトロな建物も残る北浜に、大阪心理教育センター(大阪市中央区)を開設しました。関西のみならず、全国から多くの利用者が来所され、日々熱い、心のドラマが繰り広げられています。
現在はくずは心理教育センター(大阪府枚方市)、大阪中央ルーム(大阪市中央区)、神戸・岡本ルーム(神戸市東灘区)、東京・新高円寺ルーム(東京都杉並区)の4つのカウンセリングルームを構えるとともに、来所が不要なオンラインカウンセリングを行っております。

◆私の原点
私は人の成長や人格形成に関心があって、子どもの成長や子育てに関わる支援をしてきました。最初は幼稚園の先生からの出発でした。「三つ子の魂百まで」という言葉から、幼児期が大事かと思ったのです。子どもは大好きだし幼児期は確かに重要なのですが、小さい頃に受けた教育や子育てが、その子の人格や人生にどう影響を与えるのかを追いたくて、その後少年院の教官になりました。 1000人を超える非行少年・少女たちとの出会いは、大きな疑問からスタートします。「なぜ、こんな事件を起こしたんだろう」「なぜ、そんな風に振る舞うんだろう」。生活を共にする中で、必ずそこに至るだけの道筋が見えてきます。当然のことですが、彼らは非行少年になろうと生まれてきたわけではないのです。立ち直りのプロセスの中で、どの子も、ただ愛されたかった、わかってもらいたかったという思いを強くもっていました。それがうまく伝えられず、周囲にもうまく受け止められず、すれ違いの中で分岐点を歪んだ方向に進んでしまっていたのでした。彼らの立ち直りは、まさしく育ち直しでもありました。ですが、普通に育っていくのと違い、いったん育ってからの育ち直しは、生まれ変わるほどの試練です。彼ら自身「小学4年に戻りたい」「幼稚園からやり直したい」という言葉がこぼれます。立ち直りに寄り添う中で、育った環境と周囲の対応がいかにその子の人生に影響を与えるのかを目の当たりにしてきました。もっと早い段階での発見と手当ての必要を感じ、2003年より小中高の学校に活動の場を移し、困難なケースを中心に、子どもや親、教師の支援を行ってきました。 学校では、不登校やひきこもり、発達の課題などからくる集団不適応、学習面のつまずき、非行、対人関係のトラブル、摂食障害、リストカットなど、さまざまな問題があります。ですが、丁寧にひも解いていくと、必ずそこに至るだけの背景が見えてきます。彼らの問題行動はある意味、安心できる居場所がない、自分らしく育てていないという悲痛な叫びなのです。その証拠に、周囲が行動の意味を理解すると、みるみる回復していきます。子どもの回復にとっての第一歩は、周囲の理解と適切な対応の仕方なのです。それが、彼らにとって安心できる居場所につながっていきます。育ちに、もうひとつ大事なことは、存在価値です。勉強がわかる、友だちとうまくつながれるということが、自分らしく振る舞える自信となり、さらには社会で自分を生かしていくための力になっていきます。そのためには、何につまずいているか、どこが弱いのかを知り、丁寧にフォローアップしてあげることが重要です。

◆発達だけでなく愛着という視点が、有効な問題解決に
当センターが注力する一つの大きなテーマは、発達に課題を抱えたお子さん、そして大人の方のサポートです。社会的スキルや共感性、注意力、ワーキングメモリーなどを改善するためのプログラムを提供してまいります。スキルだけでなく、ともに感じる共感を大切にした取り組みにも力を入れています。自分の気持ちを表現する喜びや人と気持ちを共有する楽しさを味わいながら、コミュニケーション能力を高めていく醍醐味を体験してください。対人関係で困難を感じている人、人といることに違和感を覚えたり安心感がもてない人、心の傷を抱えている人にも効果的です。

もう一つ大きな柱として、改善に取り組んでいるのが愛着の修復や安定化です。愛着は、幼い頃養育者との間に築かれる絆ですが、親子関係だけでなく、すべての対人関係の土台となっています。愛着が傷つき、不安定になると、そこからさまざまな問題が生じてきます。いつも自己否定や空虚感に抱えている人、人との関係に安心感が持てず、気を遣いすぎたり、親密な関係を避けてしまう人、求めている相手を同時に避難したり攻撃してしまう人、そうしたケースの根底には、不安定な愛着の問題がひそんでいるのです。発達の課題を抱えた人では、愛着の問題を起こしやすいことも知られるようになっています。当センターでは、愛着研究の第一人者で、愛着障害に関する多くの著書で知られる岡田尊司氏の指導のもと、愛着という視点から働きかけるアプローチを行います。親子関係やパートナーとの関係にも有効な手法です。

行き詰っているとき、人は子どもでも大人でも、自分の問題が見えなくなっています。そんなとき、求められるのが、その人に寄り添い、傷ついた気持ちを受け止めながら、問題解決へと誘い、支えてくれる存在です。そうした存在が仲介役となり、その人のおかれた環境との調整をすることも大切です。自分一人の力ではどうにもならないから、行き詰っているのです。そんなとき、われわれ専門家の経験とノウハウを活用していただけたらと思います。

子どもは大きな変わる力を持っています。手当てが早いほど、改善もスムーズです。また、大人の方では、考え方や物事の受け止め方が大事です。問題を解決したいけど、問題に向き合う勇気がないという場合も、どうすれば問題を解決できるのかという場合も、これまで多くのケースで、困難な問題を解決してきた経験を活かして、アドバイスや支援をさせて頂きます。

◆親との関係、愛着障害に苦しんでいる方、不安定型愛着改善プログラムが注目されています。
医学モデルではなく、愛着モデルで改善を図る愛着へのアプローチに、今注目が集まっています。親やパートナーの協力が得られないケースも、岡田尊司氏が開発した不安定型愛着改善プログラムへの導入により、光明がもたらされています。改善が難しかったこの問題にブレークスルーが起きています。当センターは、愛着に専門的な手当てを行える全国でも数少ない専門機関です。

親との関係に苦しんでいるか、愛着障害のため、生きづらさを抱えている方が、増え続けています。親が嫌々でも、治療に協力してくれるケースは、まだ幸運だと言えます。多くのケースは「困った子ども」の側の問題として片付けられてしまいます。

そんな場合にも、ご自分で、親との関係や愛着の問題を克服できるように生み出されたのが、両価型愛着改善プログラム、恐れ・回避型愛着改善プログラム、回避型愛着改善プログラムなど、不安定型愛着改善プログラムです。

これらのプログラムは、医療少年院での二十年間を含む三十年以上にわたって愛着障害を抱えた子どもから大人までに向き合い続け、回復の道を探ってきた岡田尊司氏が、すべてを注ぎ込んで開発したもので、取り組みの成果が結集されています。

長年、情緒不安定、自傷、慢性うつ、親子関係や夫婦関係で苦しんでいた方、怒りをコントロールできない、人と親しくなれないといったことで悩まれていた方で改善例、回復例が多数出ています。
岡田氏の著書『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』『母という病』は、いずれも二十万部のベストセラーとなり、いまも読み続けられています。『愛着アプローチ』では、両価型愛着改善プログラムの一部が紹介されています。

顧問、プログラム開発 医学博士 岡田尊司

◆岡田尊司 Okada Takashi
香川県出身。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院高次脳機能講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医学教室にて、脳機能や社会性発達の研究に長年従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで発達障害やパーソナリティ障害の治療に取り組む。2013年岡田クリニック開院。山形大学客員教授として、研究者や教員の社会的スキルの向上やメンタルヘルスにも取り組む。

著書に、『アスペルガー症候群』『発達障害と呼ばないで』『ストレスと適応障害』『うつと気分障害』『境界性パーソナリティ障害』(以上、幻冬舎新書)『パーソナリティ障害』『子どもの「心の病」を知る』『統合失調症』『働く人のための精神医学』(以上、PHP研究所)『愛着障害』(光文社新書)『母という病』(ポプラ社)など多数。