専門プログラム

◆うつ、不安障害、強迫性障害などの認知行動療法プログラム
うつや落ち込み、不安やパニック発作、対人関係や行動上の問題などの根底には、自分が意識しないうちに、きっかけとなる出来事に対して自動的にネガティブな価値判断をしたり、過剰で偏った受け止め方をしていることが悪循環を形成しています。こうした自動的な反応パターンに気づき、それを修正していくことで、うつや不安症状、パニック障害、対人関係や行動上の支障を改善し、適応しやすくする治療法です。社交不安障害やパーソナリティ障害、強迫性障害、依存や嗜癖などの問題にも有効です。

◆解決志向アプローチと動機付け面接法を用いた問題解決アプローチ
解決志向アプローチは、原因を調べることよりも、問題を解決することを優先するカウンセリングの方法で、問題にある程度向き合い、克服しようという意思がある場合には、とても有効な方法です。その人がどうなりたいのか、という点を重視し、主体的な問題解決を応援します。さらに、動機付け面接法は、両価的葛藤を明確化し、克服することで、変化を促進する方法です。両者を加えた問題解決アプローチは、あなたが、行き詰って、ともすると逃げたくなる問題の解決をサポートします。

◆愛着アプローチ
愛着とは、対人関係の土台をなすもので、母親と生後半年〜一歳半頃の時期に基礎が育まれ、その人の安心感や対人信頼感の土台ともなる仕組みです。オキシトシンというホルモンによって司られ、オキシトシンには人との関係を円滑にしたり愛情を維持する作用やストレスや不安を和らげる作用があります。愛着が不安定で、オキシトシン系の働きが悪いと、うつや不安、傷つきやすさ、潔癖さの原因となり、慢性のうつや気分障害、依存症、摂食障害、適応障害などを引き起こしやすくなり、また発達の課題がある人では、症状や問題行動が強まったり、適応力の低下を招いたりします。愛着アプローチは、愛着の安定化をはかり、オキシトシン系の働きを強化することで、上記のような状態の改善をはかるものです。児童・青年では、親と一緒に取り組んでもらい、結婚されている成人の場合には、御夫婦で取り組まれることが効果的です。愛着アプローチでは、症状自体を改善しようと取り組むのではなく、その人と重要な他者との関係を改善することにより、結果的に症状も良くなることをめざします。ほかの方法では、なかなか改善しないケースにも、効果が期待でき、いま注目されています。親子関係の問題や慢性的な自己否定感に苦しんでいるケースでも有用です。

◆愛着改善プログラム
愛着アプローチでは、安全基地となってくれる人の存在が必要です。しかし、現実には家族や身近な人が安全基地となってくれることが難しく、協力を期待しづらいケースもあります。また、ある程度、自分の抱えている問題に自覚が生まれ、自分でもなんとか乗り越えたいという場合もあります。しかし、通常のカウンセリングや認知行動療法などを受けてこられたけれども、不安定な愛着の問題や愛着トラウマがなかなか改善しないというケースも少なくありません。もっと有効な手立てはないのか。そうしたニーズに応えるべく、これまで積み重ねられてきたさまざまな経験や手法を集大成して作られたのが、愛着の課題に焦点化した不安定型愛着改善プログラムです。その方の愛着スタイルに応じて、両価型愛着改善プログラムと回避型・回避性パーソナリティ改善プログラム、恐れ・回避型愛着改善プログラムの三つが用意されています。 いずれも、各段階の課題をクリアして、次に進んでいくようになっており、カウンセリングであると同時に、トレーニングとして取り組めるようになっています。

◆SSP(Safe & Sound Protocol)
SSPとは、近年注目される、ポリヴェーガル理論に基づいたアプローチです。アメリカのステファン・ポージェス博士によって開発され、自閉スペクトラム症やHSP、PTSD、愛着障害などに伴う過敏性やコミュニケーションの障害、注意力の問題、自律神経のトラブルの改善などに、めざましい効果が報告されています。

過敏性や傷つきやすさに伴う生きづらさを改善するとともに、社会的な関わりやコミュニケーションを促進し、ストレスに対する抵抗力や安心感、幸福感を高める新しいアプローチです。特に聴覚の過敏さがある方や聞き取りが弱く、コミュニケーションに困難を感じている方、声のトーンやしゃべり方に支障がある方、こだわりやとらわれが強く、パニックなりやすい方、自閉傾向や回避傾向がある方、不注意や多動が目立つ方、トラウマや愛着の傷を抱えていらっしゃる方に適しています。

開発者のステファン・ポージェス博士は、自律神経系の調節機能を研究する中で、迷走神経には二つの枝があり、それぞれが異なる働きをしていることを発見しました。一つの枝は腹側枝で、愛着や社会性と関係が深く、安心感の基盤となっています。もう一つの枝である背側枝は、命を脅かされるような危険な状況で活性化し、体をフリーズさせたり、意識をなくさせたりする働きもあり、トラウマに対する反応や解離と関係しています。前者は、中耳にある二つの小さな筋肉と連動しており、この筋肉の働きが悪いと、聴覚の過敏さや自律神経の問題が生じやすいのです。

SSPでは、特殊な加工を施した音楽を聴くことで、中耳の二つの筋肉の働きを改善します。それによって、過敏さやストレスを軽減し、注意力やコミュニケーションの能力を高めます。また、SSPと他のカウンセリングやトレーニング法を組み合わせることで、効果を高めることができます。

SSPは特別な研修を受け、施行資格をもつ医師または心理士が行います。ご関心のある方は、主治医、または担当カウンセラー、窓口のスタッフにお尋ねください。

◆修復的愛着療法
親子間の傷ついた愛着を修復するアプローチです。ホールディングやインナーチャイルドの技法をもちいて、抵抗なく愛されたい、愛したいという気持ちを喚起し、スキンシップや封じ込めてきた思いを語ることを通して、絆の修復をサポートします。

◆社交不安障害改善プログラム
人前で話すのが苦手で、避けてしまうといった社交不安障害は、とても頻度の高いものです。せっかくのチャンスを避けてしまうことで、能力を発揮することができないというケースも多いと言えます。このプログラムは、社交不安障害の改善に有効なさまざまな方法を組合せ、トータルな訓練が行えるようにしたものです。認知行動療法やエクスポージャー、森田療法、ACTの手法も取り入れ、さらにトレーニングと組み合わせることで、実践的な改善を目指します。

◆インターネットやゲーム・スマホ依存への専門プログラム
インターネット・ゲームやスマートフォンに依存してしまって、学業や仕事、家庭生活に影響が出ているというケースが増えています。当センターでは、依存の背景にある問題に焦点を当て、保護者の支援により改善を目指すサポートやある程度自覚があり、改善していこうと思っている方のために、愛着アプローチで関係改善を図ったうえで、認知行動療法や心理教育、動機づけ面接法を組み合わせたプログラムを提供しています。

詳しくは、当センター顧問の『インターネット・ゲーム依存症』(文春新書)に紹介れさています。

◆パーソナリティ障害の専門プログラム
パーソナリティ障害治療の第一人者として知られる顧問の岡田尊司氏が開発した改善ブログラムに沿って、従来の方法では難しかった、不安定な愛着と結びついた認知・行動の課題の克服ができるようになってきました。境界性、自己愛性、回避性の各パーソナリティ障害に、特に焦点を絞ったプログラムを受けることができます。

◆カップルカウンセリングの専門プログラム
ご夫婦の問題や親子関係でお悩みの方が、とても増えています。しかし、専門家に相談しても、的外れなアドバイスから、関係がさらにこじれてしまう例が多いと言えます。当センターは、愛着がもつ「安全基地」機能に着目し、今かかえているお悩みに寄り添いながら、関わり方を具体的にアドバイスし、関係修復と真に自立した関係がもてるようにサポートします。カサンドラ症候群や、DVでお悩みの方、セックスレスの問題でお困りの方にも有効です。

◆マインドフルネス
慢性的なうつや空虚感、自己否定や自信欠乏で苦しんでいる人に、今とてもお勧めで効果的なのが、マインドフルネス療法です。マインドフルネスは、どんなものごとも価値判断せずにありのままに受け止め、感じる心のありようのことです。うつや空虚感に囚われやすい人は、とかく今の状態を、理想の状態と比べてしまい、ダメだとか嫌だかと、すぐに価値判断してしまう癖があるものです。それは、理想の状態や目標達成に向けて努力することが、価値のあることだという生き方を知らずしらず行ってきた結果でもあります。そういう自分だけを認めてもらえたということも関係していると思います。でも、そうした心のもち方は、物事がうまくいかないときには自分を苦しめてしまいます。マインドフルネスでは、ありのままの自分をありのままに感じることの素晴らしさに気づくという、新しい視点を体験することで、価値判断にとらわれない豊かな生き方を、頭だけでなく心や体の体験を通して身に着けていきます。

◆トラウマケア
人はさまざまな心の傷をかかえています。命にかかわるような体験をしたり、ショッキングな出来事から心的外傷を生じ、それが長期にわたってその人を苦しめるPTSDだけでなく、最近より多く人にみられるのは、小さな傷つきが積み重なって、それがある限界を超え、過敏さやネガティブな気分・思考が慢性的に続いたり、傷つくことを避けようとして、社会生活や対人関係が消極的になり、適応力が低下してしまっている状態です。また、親子関係や夫婦間で傷つけられた体験が、その人の足を引っ張っていることも多いと言えます。これまで、そうした心的外傷を改善する手段は限られ、長い時間を要するのが普通でしたが、近年、いくつかの有力なアプローチが開発され、比較的短期間に、改善が得られるケースも増えてきています。EMDR、ナラティブ・エクスポージャー・セラピー、ソマティック・エクスペリアンス、TRE、気功療法など、各専門カウンセラーによる本格的なセラピーを受けることができます。

◆ハコミセラピー
イメージを活用することで、トラウマとなった状況を再現し、克服していくことを助ける強力なセラピーの手法です。長年未解決だった問題やトラウマ、とらわれをほぐしていきます。専門的な訓練を積んだセラピストしか行うことができません。

◆トレーニングとコーチング
人前でうまく話せないとか、コミュニケーションがうまくとれない、対人関係でうまく立ち回れない、話が聞き取れないなど、さまざまな実践的な課題では、カウンセリングだけでは十分なサポートになりません。実際に練習をしたり、ロールプレイをしたり、実践的な訓練を積むことも必要です。 当センターでは、ロールプレイやスピーチ・トレーニングを中心とするソーシャル・スキル・トレーニング、ワーキングメモリーや作業課題による認知的トレーニング、現状分析やプランニングを強化し、戦略的に行動できる力を高める訓練などを、その人の課題に応じて組合せ、行っています。カウンセラーに後押ししてもらい、一緒に取り組むことで、楽しみながら実践的スキルを高めていきます。 トレーニングにおいては、カウンセリングも行いますが、課題を突破するために勇気や意欲を高め、危険や失敗を防ぎつつ、行動の後押しをするために、コーチングの手法を併用することが多いと言えます。

◆発達支援プログラム(発達トレーニング)
発達障害の方では、眼球運動や凝視がスムーズに行えなかったり、左右のバランスや目と手の協働動作がうまくできなかったり、聞き取りが苦手だったり、筋緊張が亢進していたりといった神経学的な特徴がみられます。さらに、イメージを取り扱う能力やワーキングメモリー、心の理論、部分を全体に統合する能力といったものにも課題がみられることがしばしばです。各人の特性分析を踏まえて、オーダーメイドでプログラムを用意し、必要なトレーニングを行います。従来から行われている感覚統合療法に加えて、最新の研究成果を踏まえ、神経の発達や統合を促すさまざまなトレーニングを組み合わせて行います。楽しみながら、遊びながら、スキルや共感性を高めていくことをめざします。

◆学習障害支援プログラム
がんばっているのに、勉強が身につかない、成績が伸び悩む、ミスや聞き漏らしが多い、計算はできるが文章題が苦手、漢字の書き取りが苦手といったことでお悩みの方は、少なくないと思いますが、そうした背景には、しばしば軽度の学習や注意の問題がひそんでいます。ただ、無理やり勉強させようとしても、本人の力ではどうにもならず、勉強嫌いが強まってしまうだけです。こうしたお子さんが躓きやすい問題には、その特性に即した指導や学習法が必要です。学習障害や注意障害の指導のノウハウを採り入れた支援プログラムを、各人の課題ごとに用意し、それに取り組むことで、「わかった!」「できた!」という体験を得られやすくなります。学習支援を通して自信を回復することで、情緒や行動面での改善も期待できます。